法人が寄附をした場合の税務

寄附金について、法人が国や地方公共団体に寄附した場合は、その全額が経費になり、
それ以外の寄附金は一定の限度額までが損金に算入できます。

法人が支出した一般の寄附金については、その法人の資本金等の額や所得の金額に応じて、一定の限度額までが経費にできます。
つまり、規模が大きく、それなりに業績が良い会社ほど寄附の依頼が多いと考えられ、法人の規模と利益などにより一定の基準が定められています。

一般の寄附金の損金算入限度額(いくら認められるか)

例えば、資本金等の額が1,000万円、所得の金額1,500万円であれば10万までが経費に認められます。

 

一般の寄附金の経費となる限度額についての計算式は以下のとおりです。

(資本金等の額 × (当期の月数 /12) × 2.5/1000 + 所得の金額×2.5/100)×1/4 = 経費となる限度額
注:所得の金額は、支出した寄附金の額を経費としないものとして計算します。

例として、資本金等の額1,000万円、所得の金額1,500万円、1年決算法人の場合

(1,000万円 × (12 /12) × 2.5/1000 + 1,500万円×2.5/100)×1/4 = 10万円

経費となる上限が10万円と意外と少なく感じるかもしれません。
寄附金は、事業の関連性が乏しく、利益に対する対応関係が明らかでなく、費用として無限に認めてしまうと利益が減ってしまい、結果として税収が少なくなってしまうため制限が定められています。

寄附金とは(税法上)

寄附金のポイントは、見返りがなく(対価性が無い)、任意で贈与することを意味しています。

また、寄附金、拠出金、見舞金など名目は関係なく、法人が事業活動に直接関係しない相手にお金などを寄附したものを指します。

 

限度額の計算上、寄附金は下記の3つに区分されます。

①国等に対する寄附金及び指定寄附金
②特定公益増進法人に対する寄附金
③その他一般の寄附金

①は全額が経費に認められ、③は上記の一般寄附金の算式で求めた金額が経費に認められます。
②については、③の一般寄附金の算式で求めた金額を上限として、別枠で経費が認められています。(特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭、認定NPO法人等に対する寄附金も含む)

 

その他注意点として、お金ではなく自社で扱っている商品を、時価よりも低い値段で提供した場合、時価と仕入代との差額は、実質的に贈与をしたと認められる金額として寄附金とされます。

完全支配関係の法人間では、寄附金は全額経費にできません。
また、寄附金を受け取った側では全額収益には計上もできません。
業績不振など子会社の整理を行う時に、損失負担や債権の放棄については寄附金として扱われません。(そのうち親会社が損失を被ることが明らかな場合)

交際費との相違点

交際費との相違点としては、交際費は事業に関することで見返りを期待していることです。

善意の行為としてお金を贈答したときに、それが得意先のイベントのためだったら交際費等とされます。

ただし、交際費にしても寄附金にしてもあまり節税の効果は期待できません。
積極的に使うような方針でもありませんので、必要以上の支出は控えた方がいいです。

寄附金は実際の現金の移動を客観的な支出時点を寄附の事実があったと見ています。(現金基準)
対して交際費は、仮払いや未払処理なども含めて、交際費の事実が発生した時点で事実をみています。(発生基準)
経費として認められる寄附金でも、未払のままであれば経費として認められません。

寄附金は基本的には、贈与として扱われるので、お金などの財産をあげる側の意志と、もらう側の受け取る意思が無いと成立しません。(民法第549条)
よって、基本的には契約に基づきますが、実際は契約を結んでいるケースは少ないので、実際の現金の移動を客観的な支出時点として事実を見ています。

 

寄附金は、会社から財産が減っているのに一定の制限が設けられ経費にならないことが不思議に思われる方もいます。(決算間際でお金を使って節税する感覚があるので)
善意で行ったことでも、事業に関係が無いことが経費性がないとみなされます。
また、寄附金を無限に認めることで、法人税の一部が会社の意志で寄附金に置き換わってしまうので、租制による所得再分配などの機能に影響を及ぼす可能性あります。

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【編集後記】

今日は月初の1日ということもあって、問い合わせも少なく静かな日でした。
予定していた仕事も順調に進みました。

【昨日の1日1新】

黒龍酒造 大吟醸 龍
一本義久保本店 伝心 雪

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