個人が財産をあげたりもらったりした場合(相続時精算課税)

贈与税の課税方式には、「暦年課税」と「相続時精算課税」があります。
受贈者(贈与を受ける人)は贈与者(贈与をする人)ごとにそれぞれの課税方式を選択できます。
「相続時精算課税」は、親子間などの贈与で要件に当てはまる場合に選択できる制度です。

相続時精算課税の概要

贈与財産から相続時精算課税の特別控除額を控除した残額に一定の税率を乗じて算出した金額の贈与税を支払い、贈与者が亡くなったときにその贈与財産と相続財産とを合計した価額を基に相続税額を計算し、既に支払った贈与税額を控除するものです。

贈与した財産についての贈与税が非課税になりますが、後になって合わせて精算して相続税は課税されます。
つまり節税ではなく、税金を払うのを後にして繰り延べています。

・対象者等
① 贈与者(贈与をする人)は60歳以上の者(父母や祖父母など)
② 受贈者(贈与を受ける人)は20歳以上で、かつ、贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人及び孫  ※年齢は贈与の年の1月1日現在のものです。

・計算方法
受贈者は「相続時精算課税」を選択した贈与者ごとに、1年間(1月1日~12月31日)に贈与を受けた財産の価額の合計額(課税価格)から特別控除額2,500万円(前年以前にこの特別控除を適用した金額がある場合は、その金額を控除した残額)を控除した残額に20%の税率を掛けた金額を算出し、その合計額が贈与税額となります。

・手続き
この制度を選択しようとする受贈者は、贈与税の申告期間内に、相続時精算課税選択届出書を、贈与税の申告書に添付して所轄税務署へ提出しなければなりません。
なお、相続時精算課税選択届出書には、受贈者や贈与者の戸籍の謄本又は抄本など一定の書類を添付して提出する必要があるので手続きは煩雑です。

・メリット
贈与時の価格で計算するので、値上がりする可能性が高い財産を贈与することで相続税対策になる場合もあります。
また、収益物件を贈与する場合は、贈与後の家賃収入などは相続財産としてはカウントされないので、こちらも相続税対策になる可能性があります。

・デメリット
小規模宅地等の特例との併用不可(自宅敷地の贈与で相続時精算課税を使う場合)

※小規模宅地等の特例は、同居している親などから土地・建物を相続した場合は、相続財産の評価額が8割減になるという制度です。

一度「相続時精算課税制度」選択したら撤回できません。
暦年贈与に戻せないので、毎年110万円のコツコツ相続財産を減らすようなことができません。

※暦年課税は、毎年110万円までの贈与なら非課税。

その他贈与税の特例との違い

住宅取得の際の贈与税の特例や教育資金などの一括贈与の非課税などの、その他の贈与税の特例の場合は、非課税限度額内の贈与であれば、贈与税も相続税もかかりません。

相続時精算課税は非課税制度ではなく税金を繰り延べていることに違いがあります。

特に、教育資金などの一括贈与の非課税は即効性があり、信託銀行なども携わっているので、相続時精算課税制度よりとっかかりがよさそうです。

活用の具体例

将来相続税が発生しない人は相続時精算課税制度を使ってもデメリットは少ないです。
逆に、将来相続税がかかる人が相続時精算課税制度を使い時は注意が必要です。

相続税は基礎控除という税金がかからない非課税枠が設定されています。

相続税が発生しない人とは、この相続税の基礎控除以下の遺産額であれば、相続税はかかりません。
基礎控除は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算します。

例えば、相続する遺産総額が3,000万円として、
【贈与時】
法定相続人の数が1名で、先に2,000万円を子供に渡したいと考えた場合、通常の贈与(暦年課税)では贈与税が177万円発生します。
この時に相続時精算課税制度を活用すれば贈与税は0円となります。
【相続時】
相続時精算課税制度によって贈与した2,000万円を相続税の計算時に残っていた財産1,000万円に加えたとしても3,000万円となりますので、基礎控除の範囲内となり相続税も0円となります。
このような場合であれば、相続時精算課税制度を活用し、早期にまとまった財産を子供たちに渡すことができます。

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【編集後記】
今日は午前から金融機関で仕事をしていました。
内部書類は手書きが多くて久しぶりに沢山文字を書きました。

【昨日の1日1新】
インボイス制度の研修

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